みなさん、こんにちは。
前回は、採血のPSA検査で
前立腺がんが予測できるということについてお話しました。
↓
採血で前立腺がんわかる?
今回は、PSA検査や直腸診などで前立腺がんが疑われた際、
確実にがんを診断する確定診断の方法、
前立腺針生検(はりせいけん)についてお話しします。
現在の医学において、エコー、CT、MRIなどの画像検査が発達とともに、
多くのがんが画像検査でみつかるようになりました。
しかし、それら画像検査は
あくまでがんを強く疑うという段階までの判断です。
最終的に、がんの確定診断は、
がんが疑われる組織を一部採取する「生検」と、
その生検で得た組織を顕微鏡で正常か悪性(がん)かを
専門の病理医によって判断する「病理診断」によって行われます。
実際、前立腺がんの診断にMRI検査が有用とされていますが、
MRIで診断できない前立腺がんも多く存在します。
われわれ泌尿器科医は、PSA値や直腸診などを含めて
複合的に前立腺がんが疑われた場合、
前立腺生検を行い前立腺がんの確定診断をします。
具体的な前立腺針生検の方法を解説します。
前立腺は肛門から指を入れると、お腹側に触れる部位に存在します。
前立腺がんの大きさや進行度によっては、
この直腸診により硬いがんを触れることもあります。
針生検は、肛門からエコーで前立腺を確認しながら、
直腸(お尻の穴の奥)、もしくは会陰(えいん、肛門と陰のうの間の皮膚)から
穴のあいた特殊な針をさして、針の中に組織を採取してきます。
みなさんがもっとも心配されるのは、生検時の痛みでしょう。
施設によっては、痛み止めのゼリーだけを使用して生検を行っていたため、
肛門の痛みを感じる方も一定数おりました。
当院では、2022年12月から経会陰的前立腺針生検を行いますが、
腰椎麻酔でしっかり痛みを取り除いた状態で生検を予定していますので、
ご安心いただけると思います。
麻酔のあと、生検は約10-20か所採取するのですが、
時間は10-20分程度で終了します。
生検の合併症ですが、一番多いものは出血で、
尿、精液、便に血が混じるというものですが、
数日から1か月程度で徐々におさまります。
他に、尿が出なくなる(尿閉:にょうへい)や発熱があげられます。
発熱は前立腺に菌が入り、急性前立腺炎となることが原因です。
多くは予防的な抗生物質で発症を予防できますが、
1-3%程度の割合で全身に菌が回る
敗血症(はいけつしょう)という重篤な感染症になる危険があり、
その場合は入院での抗生物質治療が必要になり、注意が必要です。
当院では、直腸からの生検よりも
こうした感染のリスクが低いとされている会陰からの生検を行います。
こうした発熱や尿閉がなければ、検査当日から通常の生活は可能で、
当院では日帰り生検を実施します。
約2-3週で生検結果はわかりますので、次回の外来で結果をお話しいたします。
このように、PSA検査で異常値であった場合、
前立腺針生検という精密検査が行われますが、
ご安心して検査をうけていただければと思います。