「梅毒」が急増、症状無く進行する性感染症/院長 岸本幸一
2023.01.06更新
こんにちは。院長の岸本です。
令和五年、新年明けましておめでとうございます。
今年はコロナ感染が昨年より落ち着くことを願っています。
本年もよろしくお願いいたします。
前回の医師コラムで、成医会での発表についてお伝えしていましたが、
コロナ感染状況の拡大に伴い、残念ながら会が中止となりました。
来年こそ発表に臨みたいと思います。
さて、2022年は梅毒が急増しており、
1999年に感染症法が改正されて以来、最大の患者報告数となっています。
当医院のある千葉県も例外ではありません。
千葉県HPより
実際、私たちのかしわ腎泌尿器クリニックでも、
梅毒の患者さんが急激に増えているのを実感しています。
最新かつ的確な治療を施すために、
当院では毎週
医師達が治療や検査、新しい医療情報、
病状が心配な患者さんについてカンファレンスを行うのですが、
今回は梅毒の治療法について、最新の知見を含め、熱く話し合いをしました。
梅毒は、コンドームを使用しないセックスや、
オーラルセックスで感染する性感染症です。
初期には、性器や口などに数ミリのできものが現れますが、
自然に消えてしまい、自覚がないまま進行します。
そして、症状も多彩で、他の疾患と区別がつきにくく、
「偽装の達人」とも呼ばれています。
梅毒の確実な診断は、採血によるRPRの検出ですが、
明らかに梅毒の所見がある場合、初診時に検査をするとともに、
医師の診断により治療も開始しています。
治療法は、飲み薬と注射があります。
今まで日本では、梅毒の治療は「アモキシシリン」という抗生剤の飲み薬を
1日3回、約4週間、内服することが多かったです。
しかし!
2022年1月から、ベンジルペニシリンベンザチンの筋肉注射製剤が発売されました。
実は世界では圧倒的にこの治療法が第一選択の治療になっています。
この注射薬は、水溶性が低く、
筋肉内で2~4週間かけてゆっくり全身へ放出されていきます。
13歳以上の成人には病気の進行度により、
早期の梅毒でしたら、1回おしりに注射するのみ、
後期の場合には週に1回、計3回の筋肉注射をしていきます。
もともとこの薬は内服薬としては、
「バイシリンGr」という名前で既に発売されていましたが、
今回梅毒の治療薬として発売されたのは、注射です。
梅毒の治療薬としては40年ぶりの事です。
ただし、ワーファリンなど血液サラサラの薬を内服していたり、
腎機能が低下していたりする患者さんには注意しながら投与をしていきます。
また、ペニシリンアレルギーのある方には禁忌のため、使用できません。
当院でも注射での治療を行っています。
注射後は副作用の観察のため、しばらくは様子を見させていただきます。
慎重に新しい治療を始めましたが、
今のところ副作用が出現した方はみられていません。
飲み薬は1日3回4週間と長期にわたり服用しなければなりませんが、
この新しい薬は1回の注射治療で終了するため、簡便です。
飲み忘れの心配もありません。
しかし、
注射による痛みが伴う事、
内服薬同様 副作用もあり得ること、
また
内服薬(3割負担だと薬代は約600円+診療費や検査代)よりも
注射薬は高価(3割負担だと薬代は約3000円+診療費や検査代)のため、
患者さんと十分話し合いながら治療を進めていきたいと思います。
まだまだ新しい注射薬の治療を取り入れている医療機関が少ないようで、
時々患者さんからお電話で問い合わせがあります。
注射で治療をご希望の場合は、是非一度 クリニックでご相談ください。
梅毒の症状がない、でも感染に心当たりが、、という方は
柏市の保健所でも無料匿名で検査をしてくれます。
梅毒は治療しなくても、一度治ったようにみえてしまう、
やっかいな病気です。
病院に行きづらいこともあり、
そのまま放置してしまう方も多いかと思います。
が、
自分だけではありません。
相手にもうつしてしまいます。
妊娠している人が梅毒に感染すると、
胎盤を通して胎児に感染し、
死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)
きちんと治療すれば必ず治すことのできる病気です。
どうぞ安心してご相談ください。
一緒に治していきましょう。