医師コラム

2022.08.28更新

 

 

こんにちは。院長の岸本です。

コロナ禍に加えて暑さも続き、体調を崩していませんか?

 

さて、今回は性感染症の一つ、性器ヘルペスについてご説明します。

 

性器ヘルペスの原因である単純ヘルペスウイルスは、

HSV-1とHSV-2の2型に分類されます。

 

HSV-1は顔面、特に口唇、HSV-2は下半身、特に性器に起こりやすいです。

HSV-2による性器ヘルペスは、再発をしやすく、

月1回から、年に数回以上再発をくりかえすこともしばしばあります。

そして、常に陰部がただれますから、HIVや他の性感染症に罹患しやすくなります。

 

ただし、日本では性器ヘルペスの70%がHSV-1とされ、

オーラルセックスを主体とした風俗の普及と関係あるとも考えられていますが、

こちらは再発しにくいとされています。

 

 

症状

初感染では,感染後潜伏期の2~10日を経て、かゆみや痛みを伴う多数の水疱(すいほう)、

いわゆる水ぶくれができるのが特徴的です。

数日後に、その水疱がやぶれ、潰瘍(かいよう)やびらんを形成し、

いわゆる「ただれた」状態となります。

 

また、これらは痛みを伴うのが特徴です。

足の付け根の脹れや、特に女性では痛みが強く、

時にはおしっこが出ないなどの強い症状をともなうこともあります。

 

水疱

水泡

 

潰瘍、びらん

潰瘍、びらん

 

 

 

診断

多くの場合は、症状と肉眼的な所見で診断が可能です。

ただし、他の疾患との鑑別のため、

10分程度で単純ヘルペス抗原を検出できる迅速キットを用いることもあります。

 

 

 

治療

抗ウイルス薬の内服が主な治療となります。

 

●初発の場合

 バラシクロビル錠(バルトレックス®500㎎)1回1錠1日2回を5~10日間。


 ファムシクロビル錠(ファムビル®250㎎)1回1錠1日3回を5~10日間。


 アシクロビル錠(ゾビラックス®200㎎)1回1錠1日5回を5~10日間。

 


初発の治療が最も重要であり、当院では飲み忘れがないよう、

服用回数の少ないバラシクロビルによる治療を行っており、

痛みが強い場合は痛み止めも処方します。

 

 

 

●再発の場合

上記①~③は、薬剤を5日間内服します。

 

また再発では、発症後24時間以内に服用をしないと効果が得られにくいため、

早めに受診いただき服用することをお勧めします。

 

 

 

●再発予防の治療


ヘルペスウイルスの厄介なところは、一度感染すると、

治療を行っても非常に再発しやすいという点で、再発を抑える治療があります。

 

再発抑制療法として、再発頻度が年6回以上の方には、

バラシクロビル(バルトレックス®)500mg 1日1錠ずつ、

毎日1年間服用する方法があります。

 

1年間服用した後に休薬し、休薬期間中の再発の有無で、再発抑制療法の再開を検討します。

この再発抑制療法は、基本的に1年間内服を続けるため、根気が必要となります。

 

 

また、待機的再発抑制療法という、再発の早い段階の時だけ内服する方法もあり、

2019年より、ファムシクロビル(ファムビル®)を2回内服する方法が

保険適応となっています。

 

これは、再発頻度が1年に3回以上で、

再発の初期症状(違和感やかゆみなど)を正確に判断できる方が対象です。


 ・1回目:初期症状発現後すぐ(6時間以内)にファムシクロビル(ファムビル®)を4錠服用

 ・2回目:1回目の服用から12時間後にファムシクロビル(ファムビル®)を4錠服用

これで終わりです。

 

この治療は、2回の内服で治療できるため簡便で、治療までの期間が早まりますが、

患者さんが適切に再発している時期を判断し内服する必要があります。

 


服用を終えたら、次回の再発時用に処方をしてもらい、

次の再発を感じたらすぐに服用できるように、いつも携帯しておくと便利です。

 

 

 


【当院の性器ヘルペス患者さんの特徴】

次に、当院での単純ヘルペス患者さんの特徴を説明します。

2021年まで当院での来院患者数は、男性167名、女性33名でした。

 

男性の年齢分布

男性は20代から40代が多かったです。

男性の年齢分布

 

 

男性の感染部位


やはり亀頭や陰茎、包皮といったペニスそのものが多いですが、陰嚢にも感染します。

男性の感染部位

 

 

男性の感染症併発


男性ではクラミジアや淋菌等を合併している方もいました。

B型肝炎などの感染症併発も見られましたので、幅広い感染症診断が必要ですね。

男性の感染症併発

 

 

女性の特徴

女性は20代~30代の方が多く、感染部位としては陰唇が最大です。

クラミジアや淋菌などを併発しており、男性同様に、他の感染症の精査と治療が必要ですね。

女性の特徴

 

 

ヘルペスは、初期治療はもちろん、

再発の治療、再発予防の治療がとても重要です。

当院では、これらの治療に対応しておりますので、

症状がありましたら早期に受診してください。

 

 

 

 

 

 

2022.08.23更新

過活動膀胱は生活環境が影響しており、

年齢、うつ病、ケーキ・和菓子摂取が関係していると

前回お話させていただきました。

 


甘いもの好きの方へ過活動膀胱の対策を今回お話する予定でしたので

早速、述べさせていただきます。


結論から言いますと「ダイエットしましょう」ということです!

 

 

 


何かすごくいいことを教えてくれるとワクワクされていた方、

期待外れの回答でごめんなさい。


ただダイエットすることが

間違いなく過活動膀胱を改善させる1番良い方法です。

 


泌尿器科医が参考にしている過活動膀胱の治療に関するガイドラインがあり、

その中では治療としてダイエットすることを1番に推奨しています。


ただし肥満でない方への効果は証明されていません。

理想体重より減りすぎては健康を害してしまいますので、

肥満でない方は骨盤底筋訓練や内服加療を行いましょう。

 


骨盤底筋訓練についてはクリニックでパンフレットをお渡しできますし、

YouTubeなどでやり方が紹介されています。

 

過活動膀胱には治療薬として抗コリン薬のお薬がありますが、

ダイエットすることでこの抗コリン薬と同じだけの効果が証明されています。

効果がどちらも同じであれば、「薬を内服するほうが簡単だ」と思うかもしれませんが、

抗コリン薬を内服すると副作用が出ることがあります。

便秘であれば10%、口の渇きであれば20-40%の方に副作用がみられますし、

認知症のリスクが高くなるとも言われています。

またお薬代もかかりますよね。

 

ダイエットの治療効果が出るまでは即効性のあるお薬の力を借りて、

ダイエットが進んでいけば、お薬をやめていくというのが理想であると考えています。

 

ではどれだけ体重を減らせばよいのかということですが、

権威ある雑誌で紹介された論文では

体重の8%減量すると失禁の回数が半分に減ったというデータが紹介されています。1)

 

70kgの人であれば5.6kg、60kgであれば4.8kgです。

決して無理ではない数字だと思います。

具体的には6カ月で8%の減量を目標としていただけるとよいでしょう。

ダイエットを開始してすぐに効果を出すことは難しいですが、

これが過活動膀胱治療の1番の近道です。


「急がば回れ」とはまさにこのことでしょうか。

 


次回はダイエットする具体的なプランについてお話したいと思います。

 


1) Leslee L Subak, Rena Wing, Delia Smith West et.al.Weight loss to treat urinary
incontinence in overweight and obese women. N Engl J Med. 2009 Jan 29;360(5):481-90.

2022.08.02更新

 

みなさん、こんにちは。

前立腺がんが採血でわかるってご存じですか?

 

前回は男性で最も多い前立腺がんについてお話しましたが、

50歳以上の男性でもっとも多い前立腺がん

 今回はPSA(ピー・エス・エー)採血で

前立腺がんを診断がある程度可能であることをご説明します。

 

PSA検査で前立腺がん検診を

 

 

 

PSAは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)というもので、

前立腺で産生されるタンパク質です。

前立腺がんでは、がん細胞自体がPSAを産生したり、正常前立腺組織を壊したりするため、

PSAが上昇すると考えられています。

 

前立腺がんの精密検査が必要と判断されるPSAの基準値は4.0 ng/mlとされています。

実際、下記グラフからわかるように、

基準値が4.0以上で前立腺がんの発見率が上昇します。

 

PSA検診

 *公益財団法人前立腺研究財団 「PSA検診 受診の手引き」(2017年版)より

 

 

この採血によるPSA検診ですが、多くの自治体の住民健診で実施されており、

2015年には全国約80%の自治体で行われております。

*公益財団法人前立腺研究財団 前立腺がん検診市町村別実施状況より

 

実際、当院近隣地域におけるPSA検診ですが、松戸市や我孫子市では行われているものの、

2022年現在、わが柏市ではPSA検診は実施されておりません

柏市の50歳以上の男性のみなさま、

是非一度は、PSA検診をお受けになることをお勧めいたします。

 

実際にPSAが4以上であった場合には、

前立腺針生検という前立腺の組織を採取する検査が必要になります。

当院では慈恵大柏病院と連携しており、慈恵医大では一泊二日で行う検査ですが、

今後当院で日帰り生検も実施する予定です。

 

前立腺がんのPSA検診について

 

またPSA値は加齢とともに上昇する傾向があるため、

年齢により基準値を決めるという「年齢階層別PSA」という考え方があり、

50歳~64歳 は3.0ng/ml、65歳~69歳では3.5ng/ml、

70歳以上は4.0ng/mlも推奨されています。

すなわち、70歳よりも若い方ではPSAが4以下でも注意が必要な場合があることになります。

 

したがって泌尿器科医は、必ずしも4.0という値だけではなく、

年齢、エコーでの前立腺所見、前立腺の大きさ、直腸診での前立腺の硬さ、

PSAの経時的変化、MRI所見などを考慮しながら、

精密検査である組織検査の必要性を検討します。

 


次回は、前立腺癌の治療(概論)について説明します。



2022.08.02更新

 

みなさん、こんにちは。

前立腺がんが採血でわかるってご存じですか?

 

前回は男性で最も多い前立腺がんについてお話しましたが、

50歳以上の男性でもっとも多い前立腺がん

 今回はPSA(ピー・エス・エー)採血で

前立腺がんを診断がある程度可能であることをご説明します。

 

PSA検査で前立腺がん検診を

 

 

 

PSAは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)というもので、

前立腺で産生されるタンパク質です。

前立腺がんでは、がん細胞自体がPSAを産生したり、正常前立腺組織を壊したりするため、

PSAが上昇すると考えられています。

 

前立腺がんの精密検査が必要と判断されるPSAの基準値は4.0 ng/mlとされています。

実際、下記グラフからわかるように、

基準値が4.0以上で前立腺がんの発見率が上昇します。

 

PSA検診

 *公益財団法人前立腺研究財団 「PSA検診 受診の手引き」(2017年版)より

 

 

この採血によるPSA検診ですが、多くの自治体の住民健診で実施されており、

2015年には全国約80%の自治体で行われております。

*公益財団法人前立腺研究財団 前立腺がん検診市町村別実施状況より

 

実際、当院近隣地域におけるPSA検診ですが、松戸市や我孫子市では行われているものの、

2022年現在、わが柏市ではPSA検診は実施されておりません

柏市の50歳以上の男性のみなさま、

是非一度は、PSA検診をお受けになることをお勧めいたします。

 

実際にPSAが4以上であった場合には、

前立腺針生検という前立腺の組織を採取する検査が必要になります。

当院では慈恵大柏病院と連携しており、慈恵医大では一泊二日で行う検査ですが、

今後当院で日帰り生検も実施する予定です。

 

前立腺がんのPSA検診について

 

またPSA値は加齢とともに上昇する傾向があるため、

年齢により基準値を決めるという「年齢階層別PSA」という考え方があり、

50歳~64歳 は3.0ng/ml、65歳~69歳では3.5ng/ml、

70歳以上は4.0ng/mlも推奨されています。

すなわち、70歳よりも若い方ではPSAが4以下でも注意が必要な場合があることになります。

 

したがって泌尿器科医は、必ずしも4.0という値だけではなく、

年齢、エコーでの前立腺所見、前立腺の大きさ、直腸診での前立腺の硬さ、

PSAの経時的変化、MRI所見などを考慮しながら、

精密検査である組織検査の必要性を検討します。

 


次回は、前立腺癌の治療(概論)について説明します。



お気軽にご相談ください 泌尿器科 / 内科 / 腎臓内科 柏駅東口より徒歩3分 土曜診療あり

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