みなさん、こんにちは。
前立腺がんが採血でわかるってご存じですか?
前回は男性で最も多い前立腺がんについてお話しましたが、
今回はPSA(ピー・エス・エー)採血で
前立腺がんを診断がある程度可能であることをご説明します。
PSAは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)というもので、
前立腺で産生されるタンパク質です。
前立腺がんでは、がん細胞自体がPSAを産生したり、正常前立腺組織を壊したりするため、
PSAが上昇すると考えられています。
前立腺がんの精密検査が必要と判断されるPSAの基準値は4.0 ng/mlとされています。
実際、下記グラフからわかるように、
基準値が4.0以上で前立腺がんの発見率が上昇します。
*公益財団法人前立腺研究財団 「PSA検診 受診の手引き」(2017年版)より
この採血によるPSA検診ですが、多くの自治体の住民健診で実施されており、
2015年には全国約80%の自治体で行われております。
*公益財団法人前立腺研究財団 前立腺がん検診市町村別実施状況より
実際、当院近隣地域におけるPSA検診ですが、松戸市や我孫子市では行われているものの、
2022年現在、わが柏市ではPSA検診は実施されておりません。
柏市の50歳以上の男性のみなさま、
是非一度は、PSA検診をお受けになることをお勧めいたします。
実際にPSAが4以上であった場合には、
前立腺針生検という前立腺の組織を採取する検査が必要になります。
当院では慈恵大柏病院と連携しており、慈恵医大では一泊二日で行う検査ですが、
今後当院で日帰り生検も実施する予定です。
またPSA値は加齢とともに上昇する傾向があるため、
年齢により基準値を決めるという「年齢階層別PSA」という考え方があり、
50歳~64歳 は3.0ng/ml、65歳~69歳では3.5ng/ml、
70歳以上は4.0ng/mlも推奨されています。
すなわち、70歳よりも若い方ではPSAが4以下でも注意が必要な場合があることになります。
したがって泌尿器科医は、必ずしも4.0という値だけではなく、
年齢、エコーでの前立腺所見、前立腺の大きさ、直腸診での前立腺の硬さ、
PSAの経時的変化、MRI所見などを考慮しながら、
精密検査である組織検査の必要性を検討します。
次回は、前立腺癌の治療(概論)について説明します。